「人生が空回りする人の2つのパターン」 ~心の矢印と社会との関係を見直してみる~
「こんなに頑張っているのに、何で???」
仕事でも、家庭でも、恋愛でも、頑張っているのに何かがうまくいかなくて、
誰かを責めたり憎んだり、もっと頑張らなければと自分を追い込んで疲れ果ててしまうことがあります。
“人生が空回り“状態です。
空回りしている時には、次のような悩みを抱えます。
ー努力が報われないことへの不満や不安
ー周囲との人間関係でのストレスや孤立感
ーこれからの人生に対する迷いと不安定さ
ーいつも何かに追われている焦りの感覚
ーやめられない自己非難
SNSが発展し、より自分と他者を比較しやすくなったせいでしょうか。
若い世代でも、この空回りに苦しむ人が増えたように感じます。
そんなとき、次の2つのパターンに陥っていないか、確認してみてください、
【1】心の矢印と自己犠牲
ひとつめは、「心の矢印」が自分自身に向いているパターンです。
“自分に矢印が向いている“というのは、
自分が失敗するかもという不安や恐れ、自分に対しての情けない気持ちに注目している、ということです。
例えば、相手の機嫌が悪かった場合に、
「あれ?何か嫌なことでもあったかな?」と思って、相手のためにできることを考える場合には、心の矢印は相手に向いています。
一方、「なんでそんな不機嫌な顔してるのよ(怒!)」と、相手に不満を感じている場合には、心の矢印は自分に向いています。
ややこしいのは、「あなたのために」の場合です。
「会社のために」「相手のために」と、我慢して他人のために尽くしてしまう人の矢印は、一見、相手の方に向いていそうです。
しかし、その奥には、「こんなに頑張っている私を認めて」とか、「これだけ尽くしているのだから、もっと私を大事にして」といった見返りが潜んでいることがあります。
このやり方は、大抵の場合うまくいきません。
自分が期待するほど相手は感謝してくれないし、気づいてさえくれなっかったりするので、「何で私ばっかり」とむしろ被害者意識を強めてしまいます。
自己犠牲は、強烈な承認欲求と表裏一体です。
心の矢印が自分に向いてしまっている時には、周りの人に理解されにくかったり、場合によっては反感を持たれてしまいます。
これでは、つらいですよね。
一度立ち止まって、「あなたのために」の奥にある自分自身の不安を見つめていくことが、空回りから抜け出す一歩になります。
【2】複雑な人間関係を生き抜くための「社会的知性」
もう一つ、人生が空回りする原因に、「社会的知性」の未熟さがあります。
「社会的知性」とは、人間関係を円滑にするために必要な能力のことです。
一生懸命に努力しているのに空回りしてしまう人は、自分のやり方や考え方に固執しすぎて、周りの状況や人の意見に気づかないことが多いようです。
相手の話を聞いているようで、聞けていない。
2023年のビジネス書ベストセラー『頭のいい人が話す前に考えていること』の著者、安達裕哉さんは、ちゃんと話が聞けていない人について、
「人の話を聞いているときに、「反論」で頭がいっぱいになってしまうなど、次に自分が話すことで頭がいっぱいになっている人」と言っています。
また、社会的知性に触れ、次のような指摘をしています。
(以下要約)「知性は、「SQ(社会的知性)」と「IQ(学校的知性)」の2種類に分けられる。大事なのは、この2つを行き来できること。しかし、学歴が高い人は、このIQ(学校的知性)を発揮するのが得意な傾向にあるので、人生をうまくいかせたいときに、学校的知性を高めようと頑張ってしまう。
※SQ(社会的知性)とは、数字やテストでは測れない、他者の思考を読み、信頼を得て、他者を動かす力のこと。
※IQ(学校的知性)とは、数字やテストで測れる、偏差値や記憶力、学力などの、ひとりで完結する力のこと。
何かがうまくいかない時、もっと自分の能力を高めようと資格集めをしたり、自分の「正しさ」を納得させようと相手を説得しがちです。マウントや正論の押し付けでは、確かにいい関係性は築けない。
「社会で活躍していく人は、ます社会的知性を身につけてから、学校的知性で復習するように学ぶ」といいます。
正しさではなく、“相手が何を求めているのか?”を常に想像したり、他者からの評価や現実をただありのままに見ることで、社会的知性が高まっていきます。
【3】空回りのループから抜け出すために
とはいえ、自己犠牲にならずに相手の欲求を満たしたり、現実をありのままに受け止めるには、胆力(自分自身の不安や恐れをそのままにホールドする力)が必要で、心理的な悩みや痛みを抱える人にとってはとてもハードルが高いものになります。
「外の世界は危険」、「人は自分を攻撃してくる」、「そのままの自分では拒絶される」という感覚が強いため、自分を守ることで精一杯だからです。
まずは、自分自身の空回りのパターンを知ることから。
真剣になりすぎて、心が焦ったり体が固まっている時ほど、何かに固執せず、楽にやる方法を考えてみる。
無理な自己犠牲ではなく、「自分のできないこと」を知り、シンプルに「続けられるものを続ける」だけでも、空回りのループから抜け出すきっかけになります。
自分では難しいなというときには、カウンセラーと一緒に心のクセを捉え直してみたり、不安や恐れの感覚を和らげていくことで、新たな自分自身の輪郭や進むべき方向が見えてくるかもしれません。
さいごに、安達さんが学生時代に恩師に教えてもらったという言葉が印象に残ったので、ご紹介して終わります。
「もし今、“人生がそれほどうまくいっていない”と思うなら、人の話をよく聞くだけで、人生は好転するよ」