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2023-12-02

母からの「否定」と「愚痴」。~その支配と罪悪感~

母との関係がしんどい。
小さい頃から抱いていた、母への違和感。

大人になってからも、親からの支配や依存に苦しむことがあります。
一人暮らしや結婚で実際に家を出て距離をとったとしてもです。

また、高齢となった母との関係性に悩む人もいます。

・本当の愛情がわからない
・いつも頭の中で自分を批判する声が聞こえる
・どんなに頑張っても、どこか自分は足りないと感じてしまう
 (→それゆえ、たくさんの資格を取得したり、正論で理論武装する)
・母が頻繁に電話をかけてくる(愚痴や不満ばかり)
・実家に帰るといつも具合が悪くなる
・会うと母親の感情に巻き込まれてしまう

そんなことはないでしょうか?

幼少期から、母親に過度の期待を背負わされたり、いつも否定されたり、感情のはけ口となってきた人は、「自分がよくわからない」ことに苦しみます。

相手の話を聞いたり、相手の気持ちを受け止めたり、お世話したりするのは得意でも、自分が苦しい時に人に助けを求めたり、自分がどう思っているのかを口に出して伝えることができなくなってしまうのです。

◾️「否定」する母親、「愚痴」を言う母親

社会的には、「親は子どもを愛して当然」と思われがちですが、母親側に強い自己愛の傾向があると、子どもを無条件に愛することが難しくなります。

「自己愛」とは、本来自分自身を信頼したり大切にする力のことですが、自己愛が強すぎてしまう場合には、まるで子どものように自分中心で、娘を自分の欲求を満たす相手として利用してしまいます。

子どもの気持ちより、世間体や人目を気にするのも特徴です。

娘に対し「あんたはブサイクだから」と容姿に関して傷つくようなことを言ったり、「○○ちゃんはすごいわね、それに比べてあんたは・・・」と他の子と比較したり、「バカ!」と罵ることもあります。

わかりやすい否定でなくとも、娘と張り合って、嫉妬するような行動を取ったり、娘が幸せをつかみそうになると不機嫌になるパターンもあります。(そして失敗した時には、「ほら、だから言ったじゃないの」と口にする)

そのような日常の中で、自分の欲求や感情が否定され、無視され続けると、何をやっても自信が持てなくなったり、どんなに頑張っても満たされない承認欲求に支配されてしまい、非常に生きづらくなってしまいます。

また、

いつも母の不幸話を繰り返し聞かされたり、夫(父親)や親戚、近所の誰々さんの悪口ばかりを聞かされたりして、ずっと母親の愚痴のゴミ箱のような役割を続けてきた人も同様の生きづらさを抱えます。

そんなの聞かなきゃいいのに、と思うかもしれませんが、どこかで「そんな可哀そうな母親の話を聞いてあげられるのは自分だけだ」、という思いもあって、自分の欲求よりも母親を慰めることを優先してしまうのです。

そのうちに、まるで透明人間のように、自分の存在がつかめなくなっていきます。

◾️母と娘の呪縛

精神科医の斎藤環さんは、著書『「自傷的自己愛」の精神分析』の中で、

母と娘の共依存関係を次のように解説しています。

「この「否定」と「愚痴」のセットメニューは、ほぼ無自覚になされているとは言え、きわめて巧妙な「支配」の手口になっています。(中略)娘は否定され続けることで自尊感情や自己価値感情が低下します。くわえて愚痴をぶつけられることで、母親を「自分がケアをしなければならない存在」として認識させられます。こうした状況下で養育された娘は「自分には価値がないのだから、せめて母親をケアしなければ」と思い込まされていきます。もしも娘がどこかで、自分の不当な扱いに怒りを覚えたとしても、「ケアすべき存在」である母親に対してそれをぶつけることはためらわれます。」(p.163)

そして、

「仮に母親の元を離れたとしても、「母親のケアという責務を放棄した」という罪悪感に苛まれます。(中略)時間差で発動する後催眠のような支配のテクニック、それこそが「否定」と「愚痴」のセットではないでしょうか。」(p.163-164)

まさに、母と離れたくても離れられない人たちの苦しみの源泉です。

母との共依存がテーマとなるカウンセリングやセラピーが長期にわたる理由もここにあります。

「お母さんを助けられない私」を受け入れることは、実はとても難しいのです。

◾️底にある激しい怒りと、感じられない怒り

母からの否定と愚痴を受け続けてきた人は、実は心の奥底に激しい怒りの感情を持っています。

母親の愛情や注目を得るために、「母が期待する私」「母を喜ばせる私」「母を困らせない私」になることを頑張ります。でも、どんなに頑張っても、振り向いてもらえない。

そのうちに、「母を喜ばせられないのは私がダメだから」と自分を否定することで、その不条理さを自分に納得させます。

一方で、心の中の小さな自分はずっと叫んでいます。

「もっと私のことをわかって!」
「もっと私のことを愛して!」
「もっとたくさん話を聞いて!」

そんな子どもとして当然の欲求を満たされなかったとしたら、「なんで!」「こんなの嫌だ!」と怒りの感情が生まれることは当然なのですが、

否定や愚痴を受け続けてきた人は、どんなに母を求めても得られない無力感のために、怒りのエネルギーは行き場を失い、怒りの感情があることにさえ気づけなくなってしまいます。

この怒りが反転して、自分責めにつながります。

自分が感情を感じるような場面で、何でも恐怖に感じてしまう人もいます。

◾️自分自身を取り戻していくには?

回復には、母親からの心理的な分離が必要となります。

とはいえ、大人になってから、勇気を出して母親に「自分がどれだけ傷ついてきたか」を伝えたとしても、「そんなことは覚えていない」と言われるか、もしくは「あなたは私のことを責めるのね」と、逆に母自身が被害者となって責めはじめる結果になり、余計無力感を深めます。

回復のためには、安全な場所や関係性の中で、自分自身もまた、母と同じように自己愛の傷つきを抱えている存在であるという過去からの痛みに直面していくことになります。
(注:セラピーには色々な種類があるので、必ず過去に直面しなければいけないというわけではありません。状況によっては、直面化を避ける場合もあります)

自分の苦しみは自分のせいではないということを理解し、無意識の「私が悪い子だから」というスタンスから抜け出すことを繰り返します。

そしてもう一つ。

母親自身がなぜ、あのような状態であったのか。
なぜ本人をありのままに受け止めることができなかったのか。

母親を非難するのでも、母を切り離すでもなく、母親には何が起きていて、それにより自分はどんな影響を受けていたのかを知ること。

臨床心理士で、公認心理師協会の会長でもある信田さよ子さんの言葉を借りれば、「ママを“研究“する」ということです。

母親を対象化して研究することで、心理的な距離が取れるようになると言います。

本人だけでなく、母親も同時に救い出していくこと。

これは、”リアルな母親”という意味ではなく、”自分自身の中にいる母親”ということです。
そして、「救い出す」とは、手を差しのべて助けるるというより、母親の運命をただありのままに尊重する、ということです。

「母親を助けようとする自分」を手放す。

そうやって、本来の小さな子どもの位置に戻ることができた時、もつれた糸が解けて、親へのとらわれが薄まっていきます。

 

◆参考文献

『「自傷的自己愛」の精神分析』斎藤環(2022)角川新書
『家族と厄災』信田さよ子(2023)生きのびるブックス
『共依存ー苦しいけれど、離れられない[新装版]』信田さよ子(2023)朝日新聞出版
『母と娘はなぜこじれるのか』斎藤環✖田房永子,角田光代,萩尾望都,信田さよ子,水無田気流(2014)NHK出版
『「母」がいちばん危ない  ”いい”娘にならない方法』斎藤学,村山由佳(2013)大和書房

 

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