不安について
不安の役割
「不安」はとても身近な感情です。
本人に、“安心・安全が確保されていません”ということを知らせてくれる感情です。
知らない場所に出かける時や、初出勤の日、メールをしたのにぜんぜん返事がこない時など、誰でも不安を感じるのではないでしょうか。
似たような感情に「恐怖」がありますが、
恐怖が、「はっきりとした外的対象のある恐れの感情」であるのに対し、
不安は、「漠然とした特定の対象がない恐れの感情」のことをいいます。
・あの人は私のことをどう思っているだろうか
・この職場で自分はうまくやっていけるだろうか
・これからの人生、どうなるのだろうか
といった、未知のものに対する感情です。
不安は、人間が生きていくための自己防衛機能でもあるので、不安が少なすぎる場合には、危険な行動をとってしまう可能性があります。
また、不安にかられると「なんとかしなければ」と焦燥感が生まれます。
不安が強すぎてしまう場合には、身体症状を伴う「不安障害」となってしまいます。
不安の症状
不安は心と体に次のような症状をもたらします。
【心の症状】
些細なことへの憂慮、緊張感、焦燥感、驚愕反応(ささいな音の刺激にも過剰に驚く)などの感情面の症状や、予期不安、将来への心配などの認知面の症状もある
【体の症状】
呼吸困難(息切れ)、動悸、口渇、嘔気、下痢、頻尿、めまい、筋緊張、発汗、手足の震え、皮膚冷感など主として自律神経を介して発生する症状が含まれる。不眠も不安の症状のひとつ
不安への対処
不安はストレスなのだと認め、ただのみ込まれるのではなく、周りの人と共有したり、意識的に気分を変えてみることも不安を和らげるのに役立ちます。
不安には、2つの種類があります。
①解決すべき不安と、②感じるしかない不安です。
「私の言ったひとことが相手を不快にさせたのでは?」という不安は、実際に相手に確認してみることで解決します。「解決すべき不安」は、未知のものを既知にすることで解消します。
一方、「新しい土地に引っ越す」とか「新しい職場に行く」など、その場になってみないとわからないものは、既知になるまでは感じるしかありません。「感じるしかない不安」は、不安になることは当然なことと、不安を受け入れることで和らぐことがあります。
このように、自分の不安はどんな不安なのか?とちょっと分析してみることもおすすめです。
過度な不安が続くような場合は、カウンセリングやセラピーで元となっている出来事や強迫観念を見ていくこともひとつの方法です。
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■参考文献
水島広子『正しく知る不安障害』(2010)技術評論社
野口普子『医療心理学入門』(2016)金剛出版