カウンセリングとセラピーの違いについて
「カウンセリングとセラピーはどう違うのですか?」
というご質問をいただくことがあるので、
「カウンセリング」と「心理セラピー(心理療法)」の違いを簡単に書いてみようと思います。
カウンセリングとセラピーのはじまりの違い
まず最初に、教科書的に言えば、「起源」が違います。
カウンセリングはアメリカの「教育」の分野から生まれました。
20世紀初頭、パーソンズを中心とした職業指導が始まりとされています。当時のアメリカでは、急速な工業化により経済が発展し、適性を考慮せずに雇用が進んだ結果、離職率が高まり、生活苦からの犯罪が社会問題となっていました。そこで、若者たちに適切な職業選択や支援を行ないました。
一方、セラピー(心理療法)はヨーロッパの「精神病理」の分野から生まれました。
18世紀ドイツのメスメルの催眠療法とその流れからのフロイトの精神分析(19世紀末~)、そこから対人関係論やゲシュタルト療法、交流分析、認知行動療法など、数多くの心理療法が発展。400にものぼる心理療法があると言われています。
現在では、カウンセリングとセラピーをどのように位置づけるかは、色々な考え方があり、その二つを区別する方もいれば、統一して考える方もいます。
こころの環境整備と体質改善
次に、私の相談室での違いを説明していきます。
カウンセリングは「こころの環境整備」
心理セラピーは「こころの体質改善」
といったイメージです。
具体的には、
「カウンセリング」では、傾聴をベースに、言葉のやり取りを通して現状の問題を整理しながら、課題解決や自己受容を目指していきます。
こんがらがって八方塞がりの状態でも、自らが言葉にして誰かに話し、またそれを支持的に聞いてもらったり対話を行う時間の中で、問題が整理され、どこでつまづいているのか、何から手をつければ良いのかが見えてきたりします。(同時に、無理に話さなくても大丈夫な場でもあります。)
・まずは話を聞いてほしい
・現状を把握し、方向性を見つけたい
・安心していられる場所が欲しい
・仕事上の問題や課題を整理して前に進みたい
そんな方におすすめです。
「心理セラピー」では、特定の訓練を積んだ心理療法を使って、心理的な問題の根本の部分へ働きかけていきます。幼少期の傷つき体験や感情の抑圧、いじめの経験、喪失体験など、より重篤的なこころの問題に対して、言語だけでなく、非言語の方法も取り入れながらアプローチしていきます。
・生きづらさの根本原因に取り組みたい
・人間関係で繰り返されるパターンを手放したい(支配・依存・対立など)
・夫婦関係、親子関係の問題を抱えている
・恋愛の悩み
・喪失感(身近な人を亡くす、大事にしていたものを失う、体の一部を切除する、昇進の機会を逃す、など)
そんな方におすすめです。
実際のセッションでは、「今、目の前の相談者には何が必要か?」ということが大事になるため、その場での判断になることも多いです。
例えば、深い傷つきにより、心理セラピーが必要な場合でも、いきなり根本にある問題に触れてしまうことは相談者の方の心にとっては危険なことだったり、抵抗を強めてしまうこともあります。そんな場合には、しばらくカウンセリングで安全の土台を作ってから心理セラピーに進む、という場合もあります。
さいごに
カウンセリングやセラピーを受けたことがない方にとっては、違いはよくわからないかもしれません。
それで大丈夫です。
当相談室では、まず「初回カウンセリング」を受けていただき、ご本人の状況やこれまでのカウンセリングや治療の有無などについても伺わせていただいたのち、今後の進め方の提案をさせていただきます。また、簡単なセラピーのワークを体験してもらうこともあります。
初回カウンセリングでは、90分のカウンセリングのほかに、ご質問やご説明の時間もとっておりますので、ぜひご活用ください。