人とのつながりを阻害する「4つのF」
自分を守るために身につけてきた鎧(よろい)が、着脱できないほど頑丈になってしまうと、
外の世界に触れることができずに心が孤立してしまうことがある。
子ども時代に、暴力や虐待はもちろんのこと、
ピリピリした家庭環境の中で感情表現ができなかったり、
親が精神的な病いやトラウマを抱えていて心理的に不安定だったり、
子ども自身がぜんそくなど慢性的な病気を抱えていたりなど、
継続してストレスにさらされていると、
体や心の痛みから防衛するために
鎧を身にまとって自分を守る。
誰か身近に、その鎧の脱ぎ方を教えてくれる大人がいればよいが、
その機会がないと、大人になってとても困ったことがおきる。
それは、
関係性による癒しを体験することができないことだ。
人とのつながりが感じにくくなり、外の世界から孤立してしまう。
心は他者を求めているのに、身体は自分を危険から守るために全力で防衛するので、近づきたいのに近づけない。
無理に近づくと、フラッシュバックが起きてしまい、そんな自分をダメだと責めてしまう。
他者に近づけたとしても、今度は見捨てられ不安が強く発動して、関係性の依存に陥ってしまい、さらに傷を深めることもある。
そうなると、相手に依存しすぎてしまうのが怖くて、恋愛や友人関係に踏み出せない。
そうした状態が続く時には、
闘争(Fight)・逃走(Flight)・凍りつき(Freeze)・迎合(Flatter)
という反応がおきている。
危機に瀕した際に発動する、人間の本能的な反応が、
適切に解除されずに、スイッチオンのままになってしまっているのだ。
「4つのF」と呼ばれていて(※参照『複雑性PTSD』ピート・ウォーカー著)、
これらの状態が続くと、恐怖、不安、孤独感、自己評価の低下などを引き起こして、対人関係の問題にもつながりやすくなる。
セラピーでは何よりも、信頼関係の構築が大事になる。
頑丈な鎧を身に着けて生き延びてきた方との関係の構築は、長い時間をかけてゆっくりと行ったり来たりするプロセスとなるが、
これまで防御することについやしていた膨大なエネルギーが弱まり、
その人が本来持っている性質が表に現れて表現されるようになると、
今度は鎧ではない、人としての純粋な強さを身にまとった姿が立ち上がってくる。
そこから再び、世界に開いていく。