ひきこもりの回復にむけて
長期化するひきこもり
「ひきこもり」という言葉が社会に登場して30年ほどがたちました。
最近では、「8050問題」という言葉が出てきたように、50代、60代というひきこもりの高齢化も進んでいます。
内閣府の調査によれば、現在115万人以上(15~39歳が54.1万人、40~64歳が61.3万人)いると推測され、平均期間は10年を超えています。40代以上の方のひきこもり期間は20年を超えているという調査もあります。
社会的な孤立はいっそう深刻化し、長期化するひきこもりは、本人にとっても家族にとっても、本当につらいものです。
本人からすれば、
「集団のなかにとけこめない」
「他人がどう思っているのか不安」
「人に会うのが怖い」
「家族に申し訳ないと思う」
「生きるのがとても苦しい」
「こんなに苦しいのは、お前(家族)のせいじゃないか」
一方、家族からすれば、
「自分の子どもだから、家族の中で解決しなければ…」
「世間の目が気になって」
「もうどうしたらよいかわからない」
「親が死んだら、この子はどうなるの」
「暴力、暴言があり、対応に困っている」
このすれ違いの中で、お互いに「なんでわかってくれないのか!」と、怒り、悲しみ、あきらめの感情に支配されてしまいます。
そして、途方にくれたまま、あっという間に数年が過ぎていくのです。
ひきこもりはシステムの問題から見ていく
引き込まざるを得なくなった原因は、人それぞれです。
実生活の人間関係の中で傷つき、ひきこもることでしか自分の尊厳を守れなかった場合もあるだろうし、
社会に適応するためにすごく努力した末に燃え尽きてしまった場合もあるだろうし、
実は無意識に家族の何かのバランスをとっていた、ということだってあるかもしれません。
それは、本人の甘えでも親の育て方の問題でもありません。
(むしろ社会に適応すべく、必死にやってきた場合が多い)
さまざまな要因が絡み合っているのです。
心や体に痛みを抱えたら、ひきこもる時間の中で回復させていくことは、誰でもありますよね。
問題は、ひきこもりが長期化してしまうシステムと、それによって家族は社会との、本人は社会と家族との接点がなくなり、孤立化してしまうことなのです。(斎藤環2002 『ひきこもり救出マニュアル』参照)
ひきこもりは社会全体の問題であり、それを包摂していく社会づくりは、これからの地域の課題だと考えます。
ひきこもりの回復に向けて
それでは、どうすればいいのか。
ひきこもりの支援には、社会的援助、医療的援助、心理的援助とさまざまなサポートがあります。
最近では家族会による地域支援やピアサポートも増えてきました。
とはいうものの、長期化からもわかるように、回復に向けた道のりは一筋縄ではいきません。
家族支援に詳しい、臨床心理士の福井里江さん(東京学芸大学准教授)によれば、本人・家族・社会の間に交流や対話を取り戻すには段階があるといいます。
第1段階:家族と支援期間がつながり、支援を開始する
第2段階:支援機関のサポートを受けながら、家族と本人の間に交流・対話を取り戻す
第3段階:家族の支援者と本人の間に接点を作る
第4段階:本人と支援期間がつながる
(2019年「ひきこもりからの回復に向けて」講演資料より)
まず、家族への支援こそ大事なのです。
ご家族が安心して相談できる場所。
どんな感情も押さえつけることなく、自身を否定することなく、感情を整理し、心と体をリラックスさせていくための場所。
イラ立って当然です。
なぜなら、大切な人なのだから。
本人や家族が孤立せず、楽に生きられるように、
ともに考え、私も学ばせてもらいながら、
一緒に成長していく。
そんな関係を築いていけたらと思っています。
関連ページ:ひきこもり(家族支援)