なぜ「やる気が起きない」のか
「今日はこれをやろう」と思っても、なかなか取りかかれなくて1日が終わってしまう。
「この本を読もう」と思っても、いつの間にかスマホやYouTubeを見てしまう。
例え何か始めたとしても、すぐに飽きてしまう。
何をするにも億劫だ。なんだか眠くなってきた。
その繰り返しの中で、
何もできない自分や、うまくできない自分を嫌悪する。
「なぜ、やる気が起きないの?」
今日はそんなお話。
何が起きているのだろう
原因は色々考えられる。
カウンセリングでは、今現在の「環境」や、自分や他者をどう捉えているかといった「認知」、「発達特性」、「トラウマ」の存在、などを探っていったりする。
そもそも職場がブラックだったり、家庭が危機的な状況だったり、発達特性からの生きづらさを抱えていたら、まずは環境調整が必要だし、
自己批判が強かったり、トラウマを抱えていたりしたら、セラピーが役に立つかもしれない。
「後でやろう」といつまでも先延ばししてしまう人や、あれこれと考えすぎて何もできない人は、実は「なまけ者」なのではなく、「完璧主義」で動けなかったりもする。
そしてうまくできない自分、何もできない自分を責めてしまう。
一方、日常生活や心理面でのストレスはそれほどないのに、「何もやる気が起きない」という悩みを抱えている人もいる。
そんな場合には、「脳疲労」が起きているのかもしれない。
脳疲労とは
「脳疲労」とは、字のごとく脳が疲れている状態のこと。(注:診断名ではない)
長時間の頭脳労働や、精神的ストレスの負荷によって、意欲や集中力が低下したり、眠くなったりする。
脳も、手や足の筋肉と同じように「臓器」なので、キャリーオーバー状態になると疲労を起こすのだ。
医師の久賀谷亮さんによれば、「90分間コンピューターを使うことは、踏み台昇降を100回やるのと同じ疲労度」だそう。(※イェール大卒の医師が明かす「脳疲労」の正体 | 健康 | 東洋経済オンライン | (toyokeizai.net))
脳疲労が起きると、ぼーっとしたり、パフォーマンスが落ちてしまうので、アメリカのオリンピック選手などは、トレーニング前にパソコンや携帯電話を使わないようにしているという。
インターネットの普及によって、日々、脳に大量の情報が入ってくるようになった現代人は、自分が思っている以上に、脳を酷使しているのかもしれない。
特に、SNSのような大量の視覚情報の濁流にのみ込まれていると、自分の頭で「考える」という機能が働きにくくなる。
わからないことはスマホで調べ、その情報を確認して満足して終了。
ショート動画をみたら、いつのまにか画面をスクロールし続けて、あっという間に時間が過ぎていく。
そこにいるのは、ネズミの回し車のように、ただひたすら反射しながら、時間を消費しているだけの自分。
なぜ、やる気が起きないのか?
それは、もう、脳がお腹いっぱいなのだ。
新たな情報、新たな刺激は、もうノーサンキューなのだ。
お腹いっぱいだから、思考する力も、判断する力も、集中する力も、意欲も低下してしまう。
うつ状態のように、脳の思考抑制が起きている。
不確実な現実の世界の手ざわり
じゃ、そんな時にはどうすればいいのか。
それは、リアルな質感を伴った「時間」と「行為」を取り戻すこと。
体を使って外の世界(モノ・コト)に触れることだ。
例えば、何があるだろう?
散歩してみるとか、
植物を観察したり育ててみるとか、
誰かに手書きで手紙を書いてみる、とか。
とにかく、まずは、身体を使って行為してみる。
「本は本屋に買いに行く」ということをおすすめしている人もいた。
めんどくさい、手間のかかるアナログな作業が、人の脳にはまだまだ大事だったりする。
日々、どんな「環境」の中で時間を過ごしているか。
その「時間」の流れは、自分の感覚にとって心地よいものか。
リアルな外の世界は、遅くて、不便で、思い通りにはならないのだけれど、その不確実な世界が、身体への手応えとともに、きっと心を楽にしてくれる。