2020-02-08
うつ病 その②「抑うつ」と「うつ病」ってどう違うの?
「抑うつ」という言葉の3つの意味
前回は、うつ病①「うつは心の風邪なのか?」をお伝えしました。
今回は、「抑うつ」と「うつ病」という言葉についてです。
「抑うつ」という言葉は、
①「抑うつ気分」②「抑うつ症状」③「うつ病」
の3つの意味で使われています。
①の「抑うつ気分」は、気が滅入る・憂鬱になる・ふさぎ込む・落ち込む・やる気が出ないなど、「気分」を意味するもので、誰もが経験するこころの不調のことです。
②「抑うつ症状」は、抑うつ気分のほかにも、能力や身体の面で不調が現れた状態をいいます。
興味を失う・疲れやすい・集中できない・死にたくなる・食欲や体重の大幅な増減・不眠または仮眠・無価値観・罪責感・自己憐憫感などが生じている状態です。
興味を失う・疲れやすい・集中できない・死にたくなる・食欲や体重の大幅な増減・不眠または仮眠・無価値観・罪責感・自己憐憫感などが生じている状態です。
※「抑うつ症状」は、うつ病以外の病気(アルコール依存や統合失調症、トラウマ症状など)によっても生じることがあるため、「うつ病」とは異なる概念となります。
①と②の総称として、お医者さんは「うつ状態」という用語を使います。
これは、「うつ病」より程度が軽いという意味ではなく、「まだどの病気に起因するか特定できていない」ということです。
③「うつ病」は、①の抑うつ気分が一定期間(基準は2週間以上)持続し、いくつかの抑うつ症状が存在して、器質的な原因(体の状態による原因、例えばてんかんなど)や統合失調症などの精神疾患には該当しないものをいいます。
少しの気分の落ち込みなら数日すれば回復しますが、もし憂うつな状態が長く続くようであれば「うつ」の症状かもしれません。
強度の心的疲労~体と頭のシャットダウン~
抑うつは、「その人にとってなんらかの困難を解決しようとして、強度の心的疲労にいたるほど懸命な努力を続けてきた後に生ずる」ことが多いといいます(『心理臨床大事典』より)。
がんばってがんばって、「もう無理!!」となったところで、頭と体が自動的にシャットダウンするのです。
具体的には、
あたまの場合⇒感情、思考、意欲の低下、憂うつな気分といった「精神症状」
からだの場合⇒眠れない、食欲が出ない、頭痛がするといった「身体症状」
があらわれます。
また、未来が見えなくなってしまう状態におちいり、過去の出来事にとらわれがちになったりもします。
このような、うつ状態に陥って意欲を失うことは、
「それ以上の精神的エネルギーの消耗を防ぐ」
という目的があります。
生き延びるために、心身が守りの体制に入るのです。
これは、気持ちや意思ではどうにもならない、体の反応です。
うつ状態の人に「がんばれ」といった励ましや、「甘えなんじゃない?」といった言葉が意味をもたないのはこのためです。
そして見方を変えれば、ご本人にとっては、「一旦立ち止まることで、これまでの人生を振り返り、軌道修正しながら、生き方の再構築をするきっかけにもなる」ということです。
症状に目を向けるだけでなく、周囲がそのための環境を一緒に整えていくことも大切になります。
次回、うつ病③は「うつとカウンセリング」をお届けします。
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